ご報告|1
プラセンタ ツボ注射の眼科治療への応用
2015年5月24日・ソラシティーカンファレンスセンター
第17回日本胎盤臨床医学会総会
はじめに
これまでの経験から、プラセンタのツボ注射が眼科疾患にも効果があるのではないかと考えていたものの、顔面への注射は希望者も少ないだろう・・・と、敢えて取り組んできませんでしたが、不可逆性(一旦進んだ病状がもどらず進行するのみ)の緑内障患者さんの苦悩を思うとき、いつかは取り組むべき課題だと思い立ち、昨年、2015年1月から5月までの間に治療のトライアルを希望された数名の方の治療を行いました。
女性の方の中で、直後の腫れが気になるなど中断された方もおられたので、結局4名の方の治療に挑戦することになりました。内1名に視野の改善例が見られ、第17回日本胎盤臨床医学会総会で、『プラセンタ ツボ注射の眼科治療への応用』という演題で発表させていただきました。
今回はそのご報告をさせていただきます。
■ 緑内障という病気と病型(タイプ)
緑内障は、視神経への圧力で網膜の血管が圧迫されて、その血管に栄養されている視神経が枯れてきて、その視神経が担当している視野が欠けてくる病気です。失明原因の第1位で、40歳以上の20人に1人が罹患しているのに、自覚症状が無いため、通院治療している人は全体の10%ほどに過ぎない。一旦生じた視野障害は、改善はおろか維持することも完全にはできないとされる難病である。
緑内障にはさまざまな病型があるが2つに大別できる。「開放隅角タイプ」は、徐々に進行するタイプで隅角が広く、通常「緑内障」と言えばこのタイプである。一方、「閉塞隅角型緑内障」は、普段は何の症状もないが突然、眼痛・頭痛・吐き気を伴う眼圧上昇発作を起こすタイプで隅角が狭い。「開放隅角タイプ」も「原発性開放隅角緑内障」と「正常眼圧緑内障」に分かれ、日本人では後者が70%である。今回治療した4名は、原発開放隅角1名・正常眼圧3名であった。
■ 治療方法と判定方法
眼の周囲のツボ6ヵ所(陽白・攅竹・糸竹空・睛明・瞳子髎・四白)と肩・頸のツボ3ヵ所(風池・天柱・肩井)に、プラセンタ注射薬「メルスモン」5アンプル(10cc)の注射を行った。
■ 結果
4名のうち、1名は得られた視野データ自体の信用度が低く除外。
2名は「不変」で「改善」は1名であった。この改善例は他の3名と違って緑内障の病型が「原発性開放隅角緑内障」であり病期は「初期」であったが、この条件が改善を導いたのか否かは例数が少なく判断できない。
■ 改善した症例
当院に受診された症状は「目の疲れ」であった。視野欠損の自覚はなかった。
緑内障の治療薬(点眼・内服)も行っているが経過中に内容の変更はない。この方は5月発表後も治療を続けており、治療開始後10ヶ月になるが今でも徐々に改善は続いている。図を見て分かるように右眼の黒い部分が時間を経る毎に薄くなっていて、MD値もマイナスが減少しつつある。緑内障と判明後は左眼視野の欠損を自覚されるようになり、治療にて欠損部が明るくなって来たという自覚症の改善もある。
■ 考察
今回の治療試験では1例だったが、発表の5月までの4ヵ月間に10回に満たないプラセンタの「眼部ツボ注射」によって改善と思われる症例が出たことは、不可逆的に進行すると言われる緑内障においては希望だと感じられた。一方、顔面への注射への心理的な抵抗を減じるためにも手技の改善や好転例の増加が必要であると考えた。
今回のトライアルにご協力いただいた患者さんには、改めて御礼申し上げます。